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戸惑いと焦りのなかで始まった訪問診療:朴澤憲和先生(1/2)

戸惑いと焦りのなかで始まった訪問診療:朴澤憲和先生(1/2)

わが町のZaitakuHacker!、三回目は鹿児島県大島郡瀬戸内町にある瀬戸内徳洲会病院と加計呂麻徳洲会診療所に勤務されている31歳の若手医師、朴澤憲和先生です。

開業医の父の背中を見て育ったという朴澤先生は、近畿大学医学部卒業後、国立病院機構大阪医療センター、市立堺病院を経て、2013年4月瀬戸内徳洲会病院へ入職。10月1日からは加計呂麻徳洲会診療所の所長も務めています。南国の奄美大島でもさらに南端の加計呂麻島で医療に従事しているというわけですが、実は北海道帯広市の出身。朴澤先生は「縁もゆかりもなかった」というこの地でどのような在宅医療、訪問診療を行っているのでしょうか?

(所属/役職など本記事内の情報はインタビュー時のものです)

在宅医療との関わり方

医学生の頃から総合内科・総合診療には興味があったのですが、踏み出したのは内科後期研修を市立堺病院で受けると決意したときです。研修は忙しくも充実し、また、御高名な先生とも知り合うことができて、本当に多くの経験が出来ました。しかし医師5年目の春、診療面で上手くいかず、同期や先輩にカバーしてもらう事例が続きました。

新しい世界が広がる一方で「一番大切であるはずの臨床が疎かになっていないか」という自分への疑念、そして「地に足が着いていない」そんな感覚を抱くようになりました。

「このままでは、いけない」と考え、市立堺病院時代の先輩で1年先に単身離島に赴いた伊東直哉医師(現在の瀬戸内徳洲会病院総合内科部長・副院長)に相談したところ、私と同じような悩みを持っていたことや、島の医療で得たことは大きいというお話をうかがい、離島医療に挑戦することにしました。

瀬戸内徳洲会病院では外来も担当していますが、毎週火・金の午後2回と月2回、グループホームの訪問診療を行っています。訪問看護は3名のスタッフで、月から土まで毎日、必要があれば臨時の訪問看護・訪問診療も行います。登録患者数は訪問診療が25名、訪問看護が50名で、平均1日2から7人ほどを診療します。訪問診療は常勤医だけでなく研修医の先生にも担当してもらっています。

加計呂麻徳洲会診療所では外来を毎週2回(月・木)、私と瀬戸内徳洲会病院の後期研修医で交互に担当しています。訪問診療は診療所歴の長い看護師1名と一緒に訪問診療に行きます。登録患者数は訪問診療で約20名、訪問看護は5名です。

加計呂麻島は東西に長く面積77.39km2と大きな島です。端から端までを路線毎に分けて1日3件から6件ほど診療します。加計呂麻島には常在している医師がいないため、看取りまで行うのは難しい状況です。ただし、高齢化率が47%と高いため、訪問診療のニーズが更に増加すると予測されます。今後は医師の確保や訪問看護ステーションの設立などに取り組み、看取りも含めた訪問診療の充実を図っていきたいと考えています。

「病を有する患者さんを診る」難しさを知った加計呂麻島での初めての訪問診療

在宅医療、訪問診療は医師2年目の時に地域医療研修で経験しましたが、本格的に関わるようになったのは奄美大島に来てからです。最初は「どうしたらいいんだろう」というのが正直な気持ちでした。

これまで500床以上の大病院で入院診療を中心とした医療を行っていたので、すぐに検査が出来ないばかりか、「まず入院で診る疾病」でも様々な事情で入院できないこともあり、最初は戸惑い、焦りばかりでした。1年半たって、やっと「在宅医療・訪問診療の奥深さ・やりがいが少しわかってきたかな」といったところです。

加計呂麻島での初めての訪問診療となったのは、変形性膝関節症と高血圧症を患っている二人の患者さんです。

診療所での診察から訪問へ移行した患者さんなので知った仲ではありましたが、初めてご自宅に訪問してみると、お二人とも身内の方が定期的に食材などを持ってきてくれることや、段差が多い自宅でも住み慣れているので杖を使いながら器用に移動できていることなど、想像以上に自宅での生活を快適に過ごされていることがわかりました。

診療所では診たことのないような笑顔を見せ、これまでの生い立ちや生活、健康に関する思いなど沢山のことをお話ししてくれたことはとても嬉しく、印象的な出来事でした。
心の中は満足感・達成感で一杯になりました。

ところが、次の訪問時に服薬状況を確認したところ・・・薬剤が大量に残っていました。どうやら、内服は不定期であったようです。 一包化やカレンダー作成などを考えましたが、血圧は不定期内服にも関わらず常に良値、心窩部不快感もなく、膝の痛みも内服は不要な程度とのことで、湿布薬以外の薬剤を全て一旦中止しました。

「患者さんのことをわかったつもりだったのに、そうではなかった」。自分の未熟さと「病を有する患者さんを診る」ことの難しさを思い知った瞬間です。自身の診療を振り返り、改善を誓いました。

「病を有する患者さんを診る」ことの難しさを知った朴澤先生。手探りの在宅医療/訪問診療のなかで、「いかに責任性・継続性を確保するか」という課題を見つけたと言います。
次回は、難しい事情を抱える離島医療だからこその工夫や取り組みと一緒にお伝えします。
離島の訪問診療でいかに責任性・継続性を担保するか:朴澤憲和先生(2/2)

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