開業物語

Dr.カン::ただいまー。

赤井 角:お帰りなさい!今日も一日、診療お疲れ様でしたm(__)m。

Dr.カン::ありがとう。昨夜、金魚は美味しくご飯を食べられたかね(半ば呆れ顔で)?

赤井 角:えー、お陰様で(空気読めない人)。昨日の続きなのですが、「累積黒字化」って何ですか??コンサルタントの手を借りなかった理由として、「キャッシュベースでの累積黒字化までの期間が長かった」とおっしゃっていましたよね?「キャッシュベース」はわかったのですが、「累積黒字化」がわからないです。

累積黒字化とは?

Dr.カン::昨日話しましたけど、開業して数か月は入ってくるお金より出ていくお金の方が多くなります。それはそれは、ざるに水を注ぐが如くじゃぶじゃぶと流れでてしまうんですよ。「いつまでお金が出ていくのか?」毎日が恐怖でした。最終的にみどり訪問クリニックの場合は「マイナス997万円」までいきました。しつこいようですが、私の生活費は含まれていません(失笑)。

赤井 角:「じゃぶじゃぶ」・・・ざる、プール、水槽・・・。早く帰って金魚に会いたくなりました(涙)。

Dr.カン:(しばらく無言)。まあ、せっかくプールという単語が出てきたので利用させてもらいますか。お金=水だと思ってくださいね。私は開業に向けて、プールに1000リットルの水を入れていました。

赤井 角:(心の声/随分と小さいプールだ)

Dr.カン:(心の声/わかりやすくするために単位を減らしているんだよ)

赤井 角:(心の声/ん?心の声が聞かれている気がする・・・)

Dr.カン:で、最初は毎月水が出ていく一方です。毎月100リットル減っていきます。ということは、とにかく毎月100リットル足さないといけません。ある月に頑張って100リットル足すことができたとします。すると、その月は水が減ることはありませんね。もし101リットル足すことができたら、その月だけで考えると1リットル増えます。これが「単月黒字化」です。

赤井 角:その月は1リットル増えても、それまでに減った分があるから、まだ水不足ですよね?

Dr.カン:そうなんですよ。みどり訪問クリニックの場合は、4月に開業して7月までは100リットル足すことができませんでした。8月からやっと100リットル以上足せるようになったんですよ。「単月黒字化」ですね。でも赤井君が言う通り水不足です。ここからプールから出ていく水よりも、足せる水の量が多くなり、結果として開業から8か月後の12月に、やっと最初の水量1000リットルがプールに溜まって、さらに1000リットルを超えたんです。水不足解決ですね。これが「累積黒字化」です。

赤井 角:なるほど。「累積黒字化」というのは、開業するために用意していた水、ま、お金ですね。そのお金の額を少しでも超えることを指すんですね。そのために必要なのは、毎月出ていくお金よりも入ってくるお金の方が多い「単月黒字化」を積み重ねる必要があるという訳ですね。せっかく「単月黒字化」しても、次の月に赤字になれば、水がまた減ることになりますもんね。

Dr.カン:そうです。なので、「単月黒字化」をどの位の時期から積み重ねることができ、どれだけ早く「累積黒字化」を実現できるのか?それが大事なのです。

赤井 角:あー、そっか、先生がコンサルタントに依頼しなかった理由、「キャッシュベースでの累積黒字化までの期間が長かった」とは、こういうことなんですねー。キャッシュベース、つまり現金や預貯金は毎月減るけど、入ってくるお金は再来月になる。だからその間を生き延びるためには、それなりのお金を手元に残しておく必要がある(英語だとプール!!そういうことかw)。でも手元のお金にも限界がある。なので、少しでも早く「累積黒字化」を実現しないといけない。なるほど。

Dr.カン:あと、気を付けて欲しいのは、4月に開業するといっても、そこからお金が出ていく訳ではないということ。開業するためにオフィスや駐車場を借りたり、往診車を購入したりスタッフを募集するための採用費が生じるなど、実際には開業する前からたくさんのお金が出ていきます。

赤井 角:それに、個人としては、前の年の収入を基に課税される住民税や、健康保険などの支出もかなりの額ですもんね。

Dr.カン:お、良く知ってるねー。それに加えて・・・。

赤井 角:あーまずい!先生、ここで失礼します。嫁が新たに金魚を買ってくることを忘れていました!今、エサが少ししかないのですよー。お店閉まる前に買わなくては。じゃ、そういうことで失礼しますm(__)m。

Dr.カン:(はぁ・・・彼の採用は失敗かも・・・)

第2話のまとめのヒトコト

「累積黒字化のタイムラインを意識する!」