開業物語

Dr.カン:ただいまー。

赤井 角:あ、お疲れ様でした。院長、早速ですが質問いいですか?

Dr.カン:なんでしょう?

赤井 角:お昼休みに『ブルー・オーシャン戦略』を少し読んでみたのですが、確かに、市場を再定義して新しい価値を見つけるための考え方や方法が紹介されていますね。他者とは違う価値やモノ、サービスを提供する、いわゆる「差別化戦略」との違いがわからなくなってしまって・・・。

Dr.カン:なるほど。簡単に説明すると、「差別化戦略」は他者と競争するときに、他者と自分を比較して自分だけの武器を見つけることなんです。しかし、『ブルー・オーシャン戦略』は朝もお話ししたとおり、あくまで、他者と競争しなくても良い戦略をとることなんですよ。なので、似ているようで、根本が違うんですよ。

在宅医療/訪問診療の領域は、「ブルー・オーシャン」

赤井 角:あ、わかりました!ありがとうございます。スッキリしました♪ あ?

Dr.カン:「あ?」?

赤井 角:そっか、もう一つわかりました。今、ボクが働いている市場、つまり、在宅医療/訪問診療の領域は、「ブルー・オーシャン」だから他者との競争は不要。

Dr.カン:そうだね。難しくなるので詳しいことは省略しますが、今、「在宅で医療を受けたい、訪問して欲しい」というニーズは増えていますよね。制度や診療報酬の面でも国が後押ししています。しかし、依然として在宅医療の世界に飛び込もうとする医師は多くない。そういう意味で、在宅医療/訪問診療の領域は「ブルー・オーシャン」ということになります。

その半面、未成熟な領域であるために、在宅医療独特の困難も待ち受けていることも知っておかなくてはいけませんね。競合と争う、つまり患者さんを取り合う「集患」を行う苦労は比較的少ない反面、煩雑になりがちなオペレーションをどう効率化するか?に知恵を絞る必要があります。

しかし、これまでの習慣や医局、役職、卒後年数など関係なく、患者さんを一人でも多く診てあげたいという想いを胸に、自分なりの創意工夫をすれば必ず報われる領域です。

赤井 角:なんか僕はスゴイことに携わっているような気がしてきました。でも・・・オペレーションの効率化って難しそうですね。

Dr.カン:確かに、こればかりは皆で作っていかなくてはダメですね。皆で作る以上「たたき台」が必要です。私は、開業して2年半ですが、これまでの経験をこうやって公開することで一つの「たたき台」になればな、と思っているんですよ。

赤井 角:「たたき台」ですか・・・。そうですよね、先生たちが臨床の場で行っている「ケースカンファレンス」も「ケース」がないと議論が進みませんし・・・。うちのクリニックをひとつの「ケース」として、今後の在宅医療/訪問診療の発展につながれば嬉しいですね♪

Dr.カン:そうですね。ここまでは経営の基礎的なキーワードである「キャッシュベース」や「単月黒字」、「累積黒字」、少し経営学的な視点になりましたが「ブルー・オーシャン戦略」についてお話ししてきました。次回からは私が開業するにあたり体験したり学んだりしたことをお話していきますよ。

赤井 角:へー、難しくなりますか・・・?

Dr.カン:いやいや、実際に起こったことベースにお話するので、これまでよりも楽しめると思いますよ。それでは、ここまでお付き合いくださった皆さん、次回から始まる「訪問診療クリニックの開業編」もぜひ読んでくださいね。

赤井 角:皆さん、ありがとうございました!

第6話のまとめのヒトコト

「在宅医療は医療界のブルー・オーシャン!」