一般企業でのマネジメント経験を活かしながら独自の工夫を凝らす姜先生。実は専門は泌尿器とのこと。在宅医療に縁もゆかりもなかった姜先生はなぜ在宅医療の現場に飛び込んだのか?後半では、若手先生へのアドバイスとともにお話をうかがっていきます!

なぜ在宅医療に?

私は、名古屋市立大学の医学部を卒業後、母校の泌尿器科学教室に入局しました。専門医の資格も取得しましたが、元々病院のマネジメントに関心があったため、外の世界から医療と日本を眺めてみたいと思いつき、米国に留学しMBA(経営学修士)を取得しました。帰国後は医学教育動画を配信・販売している株式会社ケアネットに入社し、番組の企画制作に従事しました。

確か2002年だったかな?取材で知り合った新宿ヒロクリニックの英裕雄先生の訪問診療に同行しました。往診先は、東京のど真ん中。診療を待っていたのは、老々介護の姉妹でした。妹さんは認知症で寝たきりで、世話をしているのは、なんと全盲のお姉さんでした。驚いたことに、お姉さんは、感覚を頼りにきちんと妹さんを世話をしていたのです。

都会のど真ん中で、ふと目をやると、自宅で精一杯生きている人たちがいる。そして、その人達は、医師を待っている。それからは、週末に訪問診療に携わることになりましたが、徐々に在宅医療のためのクリニックを立ち上げたいという思いが強くなっていました。

ふと自身の生まれ育った名古屋市緑区を調べたところ、在宅医療を受けられる環境がまだ充分ではありませんでした。「生まれ故郷に恩返しをしたいし、この緑区で、一から在宅医療の基盤を作りたい」。そう思い一念発起して、2012年4月にみどり訪問クリニックを開業したのです。

若い先生こそ在宅に向いている、その理由とは?

医療界だけでなく一般企業でも同じことが言えるのですが、ある程度できあがった組織に入ると、トップがよほど革新的でない限り、新しいことにトライすることに制限がかかります。「この業務、こうしたら効率的なのに・・・」と思って提案しても風習やしきたりなどの壁に阻まれることが少なくありません。

その点、在宅医療の分野はまだまだ業務設計が確立されておらず、ほとんどのクリニックが手探り状態です。先ほども言いましたが、ちょっとgoogleカレンダーの使い方を工夫するだけで、目に見える効果を実感できるくらいです。医師や事務スタッフなどの職種も年齢も関係なく、個人の知恵と工夫次第でどんどん改善され、結果として、患者さんとご家族により良いサービスを提供できるのです。

ベンチャー企業のように、若い人材がどんどん育っていける世界だと思っています。特に若い先生はITツールをいとも簡単に使いこなせるので、そのスキルを在宅医療に活かせば、私たちなどよりも更なるサービス改善を図れると思います。

もちろん、デジタルツールに頼るだけでなく、満足度を高められるようなアナログ的スキルを磨くことも重要ですので、共に学ぶ機会もどんどん企画しております。

患者さんやご家族と一番近い立場で医療を行えるこの世界で、若手にはどんどん活躍していってもらいたいと願っています。うちは見学自由なので、ちょっとでも興味があれば、お気軽にお声がけください!